僕も20代後半から筋トレや読書を何度も始めては挫折してきました。「また続かなかった」と落ち込んでいたんですが、30代になって行動科学の研究を知ってから、見方が変わったんです。
実は、習慣が続かないのは根性不足じゃなかったんです。科学的な仕組みを知らなかっただけでした。厚生労働省の調査によると、運動習慣がある成人男性は約36%しかいません。つまり、6割以上の人が習慣を続けられていないわけです。これって、むしろ「続かないのが普通」ってことですよね。
今回は、最新の行動科学に基づいて、習慣が続かない本当の原因と、それを断つための科学的セルフコントロール術をお伝えします。
「21日で習慣になる」って本当?科学が示す現実の期間

「3週間続ければ習慣になる」という話、聞いたことありませんか?僕も信じて何度もチャレンジしたんですが、どうしても3週間を超えたあたりで力尽きてしまっていました。
実はこれ、科学的な裏付けがほとんどないんです。2024年に発表された大規模な研究(2601名を対象)で分かったのは、習慣が自動的にできるようになるまで、平均で2~5か月かかるという事実でした。中央値でも約2か月。人によっては4日で習慣になる人もいれば、335日かかる人もいるそうです。
これを知ってから、僕は「最低でも2か月は様子を見よう」と決めました。すると不思議なもので、以前より焦らなくなったんです。1週間や2週間で変化が見えなくても、「まだ実験中だから」と思えるようになりました。
習慣が続かない原因の一つは、現実離れした期待だったんです。
意志力は使うほど減っていく?セルフコントロールの真実
習慣が続かない最大の原因は、「意志力」についての誤解かもしれません。
心理学者バウマイスターという人が面白い実験をしています。参加者を2つのグループに分けて、片方にはクッキーを我慢させ、もう片方には大根を我慢させました(クッキーの方が我慢するの大変ですよね)。その後、両グループに難しいパズルに挑戦してもらったところ、クッキーを我慢したグループの方が早く諦めてしまったんです。
これが意味するのは、意志力は使えば使うほど減っていく有限の資源だということ。専門的には「エゴ・ディプリション」(自我消耗:意志力が消耗してしまう現象)と呼ばれています。
僕の場合、平日は仕事での判断や我慢の連続で、夜にはもうヘトヘトです。そんな状態で「さあ、筋トレしよう」と思っても続かないのは当然でした。脳がすでに「もう頑張りたくない」モードに入っていたんです。
2024年の最新研究でも、脳はエネルギーを温存するために、自動的にセルフコントロールへの投資を減らすことが分かっています。夕方以降に新しい習慣を始めるのが難しいのは、防衛本能として正常な反応なんです。
意志力に頼らない環境デザインが習慣を変える
ここからが本題です。習慣が続かない原因が「意志力の消耗」なら、意志力を使わずに行動できる環境を作ればいいんです。
行動変容の研究分野では、「環境再構築」という手法が繰り返し効果を証明しています。これは物理的な環境を変えることで、セルフコントロールの必要量を減らす方法です。
僕が今も続けている工夫を紹介します。筋トレ用のウェアを前夜のうちにベッド脇に置いておくんです。朝起きたら、考える前に着替えられます。読みたい本はスマホより手前に置く。夜寝る前、自然と手が伸びるようになりました。逆にSNSアプリは、スマホのフォルダを2回開かないとアクセスできない場所に移動しました。開くまでの手間が増えるだけで、無駄に見る回数がかなり減りました。
神経科学の研究によると、「いつ・どこで」が固定されると、脳が自動運転モードに入りやすくなるそうです。「朝起きたらウェアに着替える」「ベッドに入ったら本を開く」のように、場所と行動がセットになると、考えなくても体が動くようになります。
小さく始めて少しずつ増やす段階的アプローチ
習慣が続かない原因で意外と見落とされがちなのが、スタート時点での目標が大きすぎることです。
研究データを見ると、シンプルな行動ほど習慣化が速く、複雑な行動ほど時間がかかることが分かっています。「毎日1時間ジョギング」みたいな負荷の高い目標は、セルフコントロール資源を一気に使い果たして、燃え尽きるリスクが高いんです。
行動変容の技法に「段階的課題」というものがあります。できるレベルから小刻みに難易度を上げることで、「自分にもできる」という自信を育てていく方法です。
僕が筋トレを習慣化できたのは、この方法のおかげでした。最初は「腕立て伏せ5回だけ」から始めました。バカバカしいくらい少ないですよね。でも、毎日5回なら絶対できます。1週間続いたら10回に増やしました。さらに1週間後には15回に。こうやって少しずつ増やしていったら、3か月後には20分のトレーニングが普通にできるようになっていました。
ポイントは、「完璧な1時間」を目指すより「毎日の2分」を優先すること。2分なら意志力をほとんど使いません。この小さな成功の積み重ねが、習慣が続かない原因を根本から断つんです。
中断しても諦めないリカバリー戦略を持つ
習慣形成の研究で分かっているのは、たまに中断すること自体は問題じゃないということです。問題なのは、中断を「失敗」だと思って完全にやめてしまうことなんです。
僕も以前、急な出張で3日間筋トレができなかったとき、「もう習慣が途切れた。やり直しか」と落ち込んで、そのままズルズルとやめてしまったことがあります。でも今は違います。リカバリー戦略を持っているからです。
まず「二度続けてはサボらない」というルールを決めました。1日できなくても、翌日は必ず再開する。これだけです。それから、中断した理由を1行だけメモするようにしています。「睡眠不足でしんどかった」「残業が22時まで」みたいに。自分を責めるためじゃなく、原因を知るためです。
そして、復帰するときの最初の1~2日は、元のレベルより軽めにすることにしています。いきなり20分やろうとせず、5分だけやる。復帰のハードルを下げるんです。
研究によると、実際に行動したかどうか(プロセス)を記録する方が、体重などの結果だけを追うより継続率が高いそうです。カレンダーに「やった日」だけ印をつけて、連続日数を見える化するのも効果的です。
中断は失敗じゃなくて、習慣を作る過程の一部なんです。この考え方が、長期的なセルフコントロールを可能にします。
まとめ:仕組みで習慣が続かない原因を断つ
習慣が続かないのは、性格や根性の問題じゃありません。科学的な仕組みを知らなかっただけです。
習慣が自動化するまで2~3か月かかること。意志力は使えば減っていく有限の資源であること。この2つを理解するだけでも、自分への見方が変わります。
そのうえで、環境デザイン、小さな目標設定、リカバリー戦略という科学的セルフコントロール術を使えば、意志力に頼らずに習慣を続けられます。大事なのは、根性じゃなくて仕組みなんです。
30代独身の僕でも続けられているんですから、きっとあなたにもできます。まずは「2分だけ」から始めてみませんか?

